海外遠征
今の時代、海外にサッカーで行く事は簡単になってきている。
数年前だったらこんな風景は見れていなかった。
もちろん、僕が幼少期の頃は地域選抜やナショナルトレセンなどに入って、やっと海外に行く事が出来た時代。
今は僕たちの様な海外との架け橋となるマネージメント事業の仕事が増えてきて、海外遠征や海外留学はお金持ちが行くもの、というような位置づけに世間では変わってきている。
もちろん、なかなかスポンサーなどのご支援を受けなければ、各ご家庭での負担になるので大きなお金が発生してしまう。
そういった印象になってしまうのも無理はない。
ひと昔前なら、お金があっても、海外とのパイプが無かったから、向こうに行く事も難しかった。
今の子ども達はほんと恵まれているよね。
観光に海外へ行くのと同じ様な感覚で、海外にサッカーで行く事が出来るようになってきた。
しかし、勘違いして欲しく無いのが、海外に行ったからサッカーが「上手く」なるわけじゃない。
最近では、僕のアカデミーのセレクションなどに来た選手の中に海外遠征経験者なども来ますが、その選手の親が「〇〇って世界大会に出場してました。大会ではアシストしたりもしました」などと、多分アピールのつもりなんだろうけど、実際に選手のプレーを見たら平均、もしくは現在のレベルではそれ以下の選手だったりする。
はっきり言おう。
今の世の中、誰でも海外に行くだけは行ける。
皆さんが世間で使われている言葉を引用するなら「お金があれば行けてしまう」
海外からしたら日本はビジネスマーケットで、海外から良いお客様だと思われている。
現にMSAにも、皆さんご存知の海外超ビッグクラブからの招待大会など、2ヶ月に1回ぐらいビジネスの問い合わせが来てる。
何が言いたいかというと、それだけのビッグクラブが関わっている様な大会ですら、実はネームがある分、ビジネス感が強く、簡単に参加が出来てしまう世の中なんです。
だからこそ、僕たちはつながりのあるミッチェル・サルガドや、スペインのセルタなど、誰でも参加出来るものでなく、信頼から成り立っている窓口からでしか参加が出来ない海外遠征しか組まないようにしてる。
今や海外遠征にチャレンジする選手やその保護者がちゃんと「本物」をしっかりと見抜ける力が必要な時代になってきている。
僕が知っている中では、日本でいう地域大会(〇〇市大会や町開催の小さなカップ戦)などを、世界大会と称して日本国内でパッケージを作っている場所や「〇〇と対戦出来る」なんて謳い文句もよくある。
名のあるビッグクラブほど、様々な年代にいくつものチームを持っている。ビッグクラブのジュニアトップクラスと試合が出来ることはそうそう無い。
しかし、物によってはローカル大会の方が質が良い場合もあったりする。
どちらにしても表現上は「世界大会」に間違いはない。
これを見抜くのはなかなか難しい。
しかし、どっちにしても海外に行ったからサッカーが上手くなるわけじゃ無い。
ヨーロッパなら大陸続きで、車を何十時間も走らせたら隣の国に行けるのとは大違い。
昔からの日本の島国文化では、外(海外)の文化が中々、入ってこない。
見たり、感じる事が出来ない中で、こう言った海外遠征を通じて、実際に日本を離れ、海外へ行き、向こうの文化やスポーツ、外国人と直接触れること。
これは大きな経験。
成長期の中で、様々な神経が育っている年代(小学校3年生〜中学校2年生ぐらい)の子ども達にとっては、この時期の海外は鼻血が出るほどの刺激や衝撃を受けると思う。
ましてや、この世代の子ども達は、人生初の海外って子も多く、一生の記憶になるだろう。
ただ、その刺激や衝撃は帰国後の環境次第では、一瞬で観光という思い出に変わってしまう。
俺は昔から海外遠征で一番大事なのは、帰国後だと思っている。
みんなはどうしても世界大会の結果などに強くこだわり過ぎてしまい、帰国する時には燃え尽きて帰ってくる選手を沢山見てきた。
ましてや、MSAが出場してきた大会は、世界のバケモンばかりが集まってる大会が多く、勝てない事がほとんど。
だから、よく考えてくれ。
本当のゴールは、この海外遠征で結果を出すことではないはず。
某インタビューなどでも答えたけど、僕は中途半端にやれちゃう世界大会より、本気の海外にけちょんけちょんにやられる方が、海外遠征の意味があると思ってる。
同世代の海外の「本物」を間近で見れる機会はそうないしね。また、レギュレーションが素晴らしい世界大会では、名門クラブばかりではなく、中堅クラブやあまり名の知られていないクラブにも各国の世代別ナショナルチームの選手が居たりする。
そういったチームと本気でぶつかって、何も出来ずに負けて泣かされて日本に帰ってくる。
これもいい経験。
向こうで見て、触れて、聞いて、感じてきた事を帰国した後に、現地と同じ熱でサッカーに打ち込めるかが一番大事。
僕も講演や父兄との会話の中で、よく例えるのは、海外遠征後はお風呂と一緒だと。
帰国後は、温度も高く熱々のお湯に浸かってるのと同じで、サッカー熱も高く、また周りからも、海外帰りだとチヤホヤされる事も多く本人はすごく気持ちが良い。
しかし、その後に浸かっているだけで、何もなく、時間だけ過ぎていけば、どんどんお湯はぬるくなっていく。
サッカーの環境、一緒にプレーする仲間、指導してくれるコーチ達。
海外遠征の前も後も、自分の周りは変わらない。
大体はこの「ぬるま湯」現象になることが日本では多いと。
本人の強い意識と、お湯でいうとぬるくなる前に熱いお湯を注ぎ足し、追い炊きの役割をしてくれる環境や指導者の存在が不可欠。
それがなければ、必ず海外遠征前と何も変わらなくなる。せっかくの海外遠征が思い出だけの海外旅行になってしまう。
僕はそれだけは避けて欲しいから、毎回、海外遠征先で選手達に口すっぱく話している。
JFA「こころのプロジェクト」で夢先生をやらせていただいてますが、今回はMSA海外遠征先初めてとなる「夢授業」をやれる事になりました。
日頃の日本の小中学校の「ユメセン」授業で話すのとはまた違くて、サッカーを通じて出会った仲間達と異国の地で、夢について考え、その途中に今「この国に居る」と。
この様な取り組みはまだ、日本はなかなか出来ていないし、子ども達にとってすごく良い経験にできると思う。
海外遠征を企画している企業は「海外に連れて行って、終わり」な事業形態がほとんど。
海外遠征という大きなイベントを最大限に活かす為にもぜひ、保護者の「見る力」、「選ぶ力」、そして、選手の海外遠征後の取り組み方を真剣に考えてもらえると僕は嬉しいです。