現代サッカーにおいて、戦術的な均衡を崩すことは年々難しくなってきているこの頃。
最近は僕自身も様々なカテゴリーで男子も女子にも指導に関わらせてもらっています。
それゆえ、サッカーにおいてあらゆるアドバンテージを最大限に活用してその道を探ることは今や不可欠。
サッカーにおいては時代も変わり、これまでは『ペナルティエリア内』での仕事だったゴールキーパーも数年前から求められるプレーもだいぶ変わってきました。
今ではこのゴールキーパーをチームの戦術的文脈の中に組み込むことが必要不可欠になってきてる。
キーパーにとって、ゴールエリアの中で飛んできた相手のシュートに備えていればいい時代ではなくなった。
僕はある意味、年齢的にもキーパーの感覚的にも近代的なサッカーの考えの元、現役でプレーしていたからこそ、さほど抵抗はなかったけど、最近のキーパーコーチはなかなか指導の部分で難しいとの話も聞く。
今までもディフェンダーの役割の中に『リベロ』や『スイーパー』などが最後尾で担っていたが、今ではその役割をゴールキーパーが担うようになってきていた。
現代のゴールキーパーがチームに果たす貢献は、守備と攻撃いずれの局面においても、今やフィールドプレーヤーのそれと大きく変わらない。僕自身も最近では『自分をキーパーだと思うな。たまたまフィールドプレーヤーだけど手が使えてるだけだ』と選手には伝えている。
手が使えるのがゴールキーパーって感覚を少しでも変えていきたいと思っていた。
また僕自身もキーパーの指導で大切にしてることは『チームへの関わり方』
ゴールキーパーは、ビルドアップの初期段階に加わわることで、数的優位を作り出すことが出来る。
キーパーが相手を食いつかせてからパスの配給をスムーズに行えれば初期段階でチームは理屈的に優位にプレーする事が出来る。
また常にキーパーの選手には『仲間の逃げ道をつくってあげなさい』と伝えてます。
味方ディフェンダーと相手選手が1対1や2対2などの状況でも必ず最終ラインにはキーパーがいる。
そのキーパーがどっしりと構え、
『さぁ、難しそうならボールをキーパーまで下げなさい』
といったポジションを取ることが出来れば、それはチームへ安心感を与え、キーパーには信頼感が生まれてくる。
近代キーパーは守備の局面において、ペナルティエリアの外まで行動半径を広げることで様々な効果があり、その関わり方が出来るキーパーがいるチームは間違いなくサッカーを有利に進めることが出来る。
押し上げた最終ラインの背後に広がるスペースをケアするスイーパーやリベロ=キーパーと再定義するわけではないが、そう言われてしまうという議論が出てくるのも、その位置に今やキーパーがいるからごく自然な成り行きだろう。
しかし、そこには付随して足技に優れ、判断力、決断力に優れたゴールキーパーが必要になってくる。
あまり話すぎると個性が…とか批判を受けそうですが、最近のゴールキーパースクールだったり、キーパーコーチななどのトレーニングを時間があるときには観に行くようにしていますが、キーパー育成の環境はやはりキーパーとしてのボールを取る、倒れるなどの指導ばかりになっている傾向も良くみるし、良くそういった話を聞きます。
もちろんゴールキーパーは文字通りゴールを守ること。
そういったスキルももちろん大事ですが、現代のゴールキーパー育成の環境に対応できていない指導者だったり育成の環境が多くあります。
キーパーとしてのゴールを守るという技術は身に付いてもゴール付近を守る技術は一向に伸びません。またそこばかりになってしまうと手が使えるエリアから怖くて出れない選手が多くなってきます。
最近でいうとスイーパー=キーパーという概念のゴールキーパー進化において最も近代的なキーパー像を作り上げたマヌエル・ノイアー。
このノイアーが所属しているバイエルンとドイツ代表は、ビルドアップとそれに続く攻撃の局面において、文字通りのリベロとして機能するだけでなく、その鋭い直観とポジショニングのセンスによって、自分と最終ラインの間に広がるスペースを、まるで存在しないものであるかのように扱ってみせる。